Archive for 2月, 2012

ハンニバル

火曜日, 2月 28th, 2012

ミュージシャンにとってラストパフォーマンスは選ぶことができるのか?
たぶんほとんどの場合それはできない。マイルス・デイヴィスの場合もそうだったと思う。
1991年8月25日、ロサンゼルスでのライブの後、倒れその約一ヶ月後に永眠。
「ハンニバル」はそのラストパフォーマンスの一曲で、マイルスの「白鳥の歌」になった。

「マイルス・デイヴィス自叙伝」の中に、「たぶん六歳か七歳だった。田舎の暗い夜道を歩いていると、突然どこからか、音楽が聞こえてきた。みんなが幽霊が住んでいると言っていた気持ちの悪い形の木々の間をぬってだ。(中略)そこにはB.B.キングみたいなギターを弾いている奴がいて、男と女が”失望”について語り、歌っていた。あれは、すごい音楽だった。特に女の歌はすごかった。あの時、オレは何かを身につけたんだ、」という一節がある。

共著者で詩人のクインシー・トループによれば、マイルスは一生、その女の歌に到達したいと考えていたという。しかしそれはついに叶わず、トループはこの「ハンニバル」を聴くと、そのことを思うという。
このエピソードはこの演奏の印象を際立たせる力を持っている。音楽を聴くということは音だけを聴くのではないからだ。

ちなみに「ハンニバル」とはローマ史上ローマの最大の敵として後世まで語り伝えられた紀元前のカルタゴの将軍だが、マイルスとこの名前の出会いは、子供の頃、父方の伯父フェルディナンドがよく「シーザーやハンニバルや黒人史について、よく話してくれた」ことに遡る。

ピアニストを撃て(1960)

日曜日, 2月 19th, 2012

『ピアニストを撃て』(原題: Tirez sur le pianiste, 英題: Shoot the Piano Player)

エルトン・ジョンのアルバム「ピアニストを撃つな」が「ピアニストを撃て」(Tirez sur le pianiste)」意識したものであることは、タイトルをもじっているだけでなく、アルバムジャケットに映画館を使い、そこに張られているポスターに「マルクス兄弟」のものを使っていることからも明らかである。
「ピアニストを撃て」では、マルクス兄弟やチャップリンのフィルムを思わせるドタバタのカットがあり、主人公(シャルル・アズナブール)が名前を新進天才ピアニストÉdouard Saroyanから酒場のピアノ弾きCharlie Kohler(Colère: 怒り)「怒れるチャップリン」に変え、その長兄の名前がChico Saroyan(Chicoはマルクス兄弟のひとりの名前)であることからもそれが分かる。
Charlieは夫の売り込みのために興行師に身を任せ、その自責の念から自殺した妻を思い出させる元の名前で呼ばれることを拒否しているが、その一方でかつての栄光の証である新進天才ピアニスト時代のリサイタルのポスターを密かに自室の壁に貼り続けている。

しかしタイトルについては、かつてアメリカ西部の酒場では貴重なピアニストを保護するために「ピアニストを撃たないでください」と貼り紙がしてあったという逸話があることから、これをもとにトリュフォーがそれをもじって「ピアニストを撃て」としたと考えられる。(映画の原作は、デイビッド・グーディスの”Down There”)
とすれば、エルトン・ジョンはトリュフォーに触発され、アルバムタイトルについては「ピアニストを撃て」をもじったと言うよりは、むしろ「先祖返り」をしたと言うべきである。

「ピアニストを撃つな(Don’t Shoot Me I’m Only The Piano Player)」がピアニスト自身が身を守るために使う言葉であるなら、「ピアニストを撃て(Tirez sur le pianiste)は「(他の人間の代わりに)俺を撃て(Tirez sur moi)」となるだろう。
愛する妻を自殺から救えなかったかつての天才ピアニストが、最後に暗い表情で酒場のピアノを弾きながら反芻する、新たに得た愛する女、彼のために一緒にかつての栄光を取り戻そうとする女をギャングの銃撃から守れなかったことへの深い悔恨の言葉ではないか。
音楽(芸術)における才能の多寡と興行的(世俗的)な成功とは必ずしも一致せず、ましてや幸福とは無関係であること、またそれでもその才能とともにしか生きていくことはできないということを苦く思い起こさせる。

日曜日が待ち遠しい(1983)

日曜日, 2月 12th, 2012

日曜日が待ち遠しい!』(原題: Vivement dimanche!

遺作となったこの作品で、トリュフォーが、実生活とは対照的に映画作家になっていく過程で見た数々のフィルムへのオマージュをちりばめているのは象徴的である。
流れ去る「人生」と残る「映画」。

あえてモノクロで撮影したのは、若い日に熱中したハリウッドのフィルム・ノワールを撮りたかったからに違いないし、現にキューブリックの「現金に体を張れ」を思わせるフラッシュバックや「競馬」が使われている。キューブリックへの言及は直接的にも行われていて、重要な舞台の一つである映画館「エデン座(「エデンの東」を連想させる)」で上映されているのは「突撃」だ。
フィルムへのその他の「目くばせ」および詳しい解説はこちら

現金に体を張れ(1956)

金曜日, 2月 10th, 2012

現金に体を張れ』(The Killing

ジェラルド・フリードの音楽が緊迫感を高める。
大金を狙って周到に計画された完全犯罪が、女がつまずきの石となり、最後に「偶然」によって破綻してしまうのは、4年後に制作された「太陽がいっぱい」の原型となっているかもしれない。
光の「Plein Soleil」と闇の「The Killing」であるがいずれも皮肉なラストシーンが印象的。

オペラ座の怪人 (2004)

木曜日, 2月 9th, 2012

オペラ座の怪人』(原題: The Phantom of the Opera

マディソン郡の橋(1995)

土曜日, 2月 4th, 2012

マディソン郡の橋』(The Bridges of Madison County

太陽がいっぱい(1960)

水曜日, 2月 1st, 2012

太陽がいっぱい』(Plein soleil